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     2013年 12月 




                クリスマス・ストーリー

                「彼は人となって、私達の間に住まわれた」     
 Byルイス・カッセルズ

彼は、クリスマスなどただの無意味なお祭り騒ぎでしかないと思っていた。決して守銭奴だったわけではない。親切で礼儀正しく、家族には気前がよく、他者に対しても公明正大な男だった。

しかし彼には、この時期になるといつも教会で聞かされる、「神であるイエスが人となってこの世に来られた」という話しが、どうしても信じられなかったのだ。正直な男であればこそ、信じるふりもできなかった。

「君を悲しませるのは僕としても本当に心外なんだが、神が人になったなんて、どうしても理解できないんだ。僕には、そんなことはナンセンスにしか思えないんだよ」。男は、熱心なクリスチャンである妻にそう言うのだった。

クリスマスイブには、妻は子どもたちと礼拝に出かけていった。しかし彼は行かなかった。「信じていないのにクリスマスを祝うなんて、偽善者みたいな真似はできないよ。僕は家で留守番する。でも、君たちが帰るまでは、寝ないで待っているから」。

家族が出かけてまもなくすると、雪が降り始めた。窓際に立って外を眺めているうちに、雪はどんどん激しくなっていった。「どうせいクリスマスなら、ホワイトクリスマスというのも悪くないだろう」。男は暖炉の側の椅子に腰かけ、新聞を読み始めた。

その時、外でドスンという大きな音がした。彼は顔を上げた。ドスン、ドスン、ドスン...
音はたて続けに聞こえてくる。誰かが居間の窓に雪玉でも投げているのだろうか。

音の正体を突き止めるために、彼は玄関のドアを開け、外に顔を出した。するとそこには、雪にまみれてもがいている鳥の群がいた。吹雪に見舞われ、必死になって隠れる場所を探して、男の家の窓を通り抜けようとしていたのだった。

「かわいそうに!この鳥たちを、このまま放っておくわけにはいかないぞ。そんなことをしたら死んでしまう。でも、どうやって助けてあげたらいいだろう」男は考えた。そして、子どもたちのポニーがつながれている小屋を思い出した。「あそこなら、鳥の避難場所にはちょうどいい」。彼は上着を着て雨靴をはくと、外へ出た。

雪はどんどん深くなっていく。家の隣にある小屋まで歩くと、鳥が入ってこられるよう、扉を大きく開いて中の明かりをつけた。しかし、鳥たちは動こうとはしなかった。

「エサを見せれば入ってくるだろうか」。男はそう考えると、急いで家に戻り、パンくずを持ってきた。そして家の前から小屋まで、点々と続くように雪の上にまいた。

しかし、鳥たちはパンくずには目もくれず、雪の中でで力なく羽をばたつかせるだけだった。何とかして鳥たちを小屋の中に移動させようと、彼は腕を振りながら躍起になって鳥のまわりを歩き回った。鳥を追いかけて捕まえ、無理やり中へ入れようとも試みた。しかし、鳥は怯えて四方八方へと逃げ惑うだけで、明かりのついた暖かい小屋へは入ろうとしなかった。

「僕のことを得体の知れない恐い存在だと思っているのだろう。何をしても怖がらせてしまうだけだ。無理もない。彼らには僕のやろうとしていることが理解できないのだから。どうすれば鳥に信頼してもらえるのだろうか。ああ、ほんの数分だけでいいから、僕が鳥になれたらなあ。鳥のことばを話して仲間になれば、怖がらなくてもいいと教えてあげられるのに。そうすれば、小屋へ案内して、彼らを助けてあげることができるのに...」



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ちょうどその時、教会の鐘がなり始めた。男は雪の中に立ったまま、クリスマスを祝うその鐘の音にしばらく耳を傾けた。「神の御子は、今宵しも、ベツレヘムに生まれたもう...」鐘の音が奏でるその讃美歌を小さな声で口ずさむと、彼はおもむろに雪の中に膝をついて座り込んだ。

「やっと分かりました」男はつぶやいた。「なぜ、あなたが人間にならなければならなかったのか...」







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